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NPOのリスクを見極めるには?

助成ノート③

· 戦略的資金提供

こんにちは。リープ共創基金の代表の加藤です。

今年度の助成事業では全国で職を失った若者に対して就労支援の機会を提供する団体を中心に約1億7000万円の資金提供をさせて頂きました。

この助成規模は日本でも最大規模になるのですが、この資金を効果的かつ公正に使うにはとても苦労しました。

実際どんな提案が来るの?

大雑把に言って、文句のつけようのない提案をしてくれる団体は1割くらいです。こういう団体はこちらから教えを請いたいくらいで、採択した後に勉強をさせて頂くことも多いです。他の採択団体に不可欠なノウハウの源泉になったりします。ただ、優れた団体ほど、資金提供側を選んでくるので、全体のリスクを下げつつも、彼らに自由に資金を使って頂けるようにするというのが助成事業の最大のポイントだと思います。

ちなみに、「助成」という言葉は、優れた提案に対し資金を提供することを指します。つまり、重要なのは、資金を提供される側が資金の提供者よりも素晴らしいのだと信じることができるというのが前提です。「助成」はある種の投資でもあり、また、アウトソーシングでもあるので、もしも、資金を提供する側が当該事業において優れたパフォーマンスを出せるのであれば、自分たちで事業をすればいいわけです。逆に本当に優れた団体に助成ができるのであれば、彼らの成長や事業を邪魔をしないことの方が重要だと考えています。

従って、本当に優れた提案や、優れた団体を探し出せるか否かが中間に立つ財団や支援組織の最大の価値になります。

3割の団体をどう見極めるか

さて、1割の文句のつけようのない団体以外にどんな提案があるかというと、ああ、これは通したいなという提案は約3割です。事業や提案の中身はいいんだけれど、赤字が増えてきていて、団体の継続性に赤信号がついているケースが約3割。残りの3割程度は書類の形式や公募の趣旨が十分に理解されていないケースがでしょうか。

最低限の書類の形式や公募の趣旨が理解されていないケースは選考から外さざるを得ないのですが、悩みどころは、惜しい団体や伸びしろのある団体をどこまで採択するかどうかです。

コントロールできるリスクかどうか

問題になるのは、資金を提供するだけでは上手くはいかないのだけれど、成長の可能性が期待できる団体にどこまで「投資」するかという点です。取れるリスクなのか、取ると道連れになってしまうリスクなのかの見極めがもっとも重要になります。

審査にあたって、決算書などは出して頂くのですが、今回はこんな方針でリスクと可能性の双方を評価させてもらうことにしました。

1.財務リスクの評価

これは単純に赤字が続いており累積損失がたまっていないどうかをチェックします。単年度の赤字の幅だけではなく、累積損失の規模を見ます。年間の事業規模に対して、どの程度の赤字が溜まっているかを確認します。私の経験上は累積損失が多いほど、再建が難しく、また、不正流用など余計なリスクが増えます。

2.地域や社会に必要な団体か?

赤字状況であるとは言え、地域社会や日本の未来にとって大事な団体か否かも重要なポイントです。もし、そうであれば、あえて、助成金を提供し、団体の建て直しをすることこそが重要なこともあるでしょう。

3.キャッシュフローは回っているか?

一方で、建て直しをする必要があるのだということが明快であっても、建て直しにどれだけの時間がかかるのか?という見極めは重要です。仮に助成期間が1年だとして、建て直しに3年以上かかると考えられるものをやるか否かは重要な判断ポイントです。助成期間と建て直し期間にずれがある場合、どこまでやるのかも判断する必要があります。

4.債務の性質は何か?

上記のようなポイントを打破できることは少ないのですが、もしも、助成期間中に再建が可能な状況であれば、債務をどう片付けようかという現実に戻ることができます。基本的に返還の必要性の多い債務が多いものの、利率に関しては交渉可能であったり、債務を統合するような方法も可能だったりします。貸し手にとって、一番嫌なのは貸し先が倒産して、元本ごと返ってこないことなので、きちんと見通しがついていれば対話に応じてくれることも少なくありません。

5.立て直し可能か?

さて、最終的に答えなければならいなのは、当事者である団体の経営者がどのような建て直し戦略を持ち、助成する側がどのような役割を果たせば、本当に債務の整理や建て直しが可能かという具体策や役割分担がはっきりとしていることでしょうか。コミットメントのない再建はありえないので。

今の所、事業再生のために助成金を使うということは、少なくとも今の日本では聞いたことはありません。ただし、現場を見ていると、再建とまではいかないかもしれないけれど、M&Aの機会でもあれば、本来、日本のために適切な解決策が得られるのかもしれないという団体に出会うことは少なくありません。中々、成功事例も失敗事例も出てこない領域ですが、ソーシャルセクターが育ってきたからこそ、向き合うべき課題だと私は考えています。

リスクを見極め方

実際のところ、リスクの大元は経営者と組織文化にあることがほとんどです。これを見極めるには、これまでのように決算ベースも良いのですが、実際にオフィスに訪問するのがオススメです。アポなしの方が実態がよく見えるので、ふらっと訪問するのも良い手段です。

リモートワークで景色が変わりつつありますが、営利、非営利を問わず事務所の雰囲気が明るく、活気をかんじられるか否かはとても重要です。伸びる会社は「立っている人が多い」ともよく言われますね。メンバーの行動量が単純に多いのでしょう。個人的には、トイレも必ず使わせてもらうようにしています。私の経験上、物件や設備が新しいか古いか事業の成長とは関係なかったのですが、手入れをされているか否かは団体の事務処理能力と直結していました。

もし、こんなNPOや会社の目利きに興味があれば、藤野秀人さんの名著、スリッパの法則がオススメです。現場を訪れるだけで、会社の癖みたいなものがいかに読み取れるのか感覚的にわかるようになります。

書き手・加藤徹生(リープ共創基金代表)

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