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キャッシュフォーワークに大切なのは、ストーリー

コロナ禍の中で、就労支援には何ができるのか?後編

· コロナ対応

コロナ禍で収入が減少し、生活困窮に陥った若者への就労支援を行う助成プログラム「キャッシュフォーワーク2020」。10年以上取引のない”休眠預金”等を活用し、地域課題を解決していく取り組みです。

オンラインで行われた8/6のキックオフイベント『コロナ禍を機会とした、雇用による若者支援を考える』には、80名が参加。レポート後編では、モデレーター加藤徹生と、スピーカー3名の対談を紹介します(前編はこちら)。

キャッシュフォーワークは、緊急時の”仮設仕事”

ーーキャッシュフォーワークをコロナ禍の中でどう使える可能性があるのか、みなさんはどう考えていますか。

工藤:キャッシュフォーワークにおいて、若者を雇用する雇用型と、働き方に柔軟性を持たせた業務委託や外注型と、永松先生はどちらが望ましいと考えていますか?

永松:東日本大震災の際に考えた結論としては、雇用という形をとったほうが、雇用者が労働関連法によって保護されるという点で望ましいと思います。一方で、保険の加入だとかの雇用の手続きがボトルネックになって雇用を創出できないという声もいっぱい聞きました。煩雑な手続きや契約をなくせという声も現場ではありましたが、そうするとブラック企業と変わらなくなってしまいます。原則は雇用の形をとるのが望ましいと思います。

工藤:旧来の就労支援は、こうした災害時において、就業や雇用が回復してからはじめて役にたつものでしたが、キャッシュフォーワークはかなり早いフェーズから役に立てるんじゃないかと考えています。

永松:キャッシュフォーワークは緊急時の介入手法で、”仮設仕事”というのが重要なコンセプトです。住宅を失ったら仮設住宅が必要なのと同じように、仕事を失ったら仮設仕事が必要じゃないかということです。仮設住宅に住む間に力を蓄えて次の暮らしに移れるように、仮設仕事も経験やスキルをためて次の仕事に移れるのが理想的だと思います。

渡邉:今回のコロナ禍は、東日本大震災との違って自然災害ではないですし、インフラ整備のための仕事とかはほぼないと思うんです。どういう仕事や可能性がありえるのか、「こういう仕事ができる、こういう人たちがいるんです」というのを就労支援している団体がもっと見せてくれると、企業側としてはありがたいです。

工藤

:育て上げネットでは、昔は「インターンシップさせてください」って企業に言っていましたが、コロナ前は企業から「若者を採用したいんですが…」と毎月のように問い合わせがきて対応しきれない状況でした。今はコロナ禍で採用イベントや説明会ができなくなったりして、若い人を雇いたいのにより出会えくなっているという現状があります。

インフラ整備など大きな雇用をつくるというより、「1人でも2人でも雇いたい」という中小企業と関係をつくって既存のミスマッチを潰し、働くバイパスをたくさんつくっていくことが大事なのではと思います。余力がある人、お金がある人しかできないというのが就労支援のジレンマだったので、今回はそれを解消できたらと思ってます。

仕事や業種ではなく、やりがいを持てるストーリーが大切

ーー参加者から、「キャッシュフォーワークが成果を最大化しやすい環境や業種はなにか?」という質問が来ています。仕事や業種、あるいはどういう人を対象とすると効果があるのかなど、永松先生のご意見を伺えますか。

永松”ちょっときっかけがあれば自立できそうな人たち”を対象として支援していくのが、キャッシュフォーワークという手法です。「働かないと支援してもらえないのか」という批判も受けましたが、全く働くことができない、全く外に出られないという人は、むしろ福祉の対象として別の形で支えていく必要があると思います。

「どんな仕事や業種が向いている」というのは特にありませんが、大切なのはストーリーです。「自分たちの地域を立て直すんだ」「これをやることで復興につながるんだ」「みんなのためになっているという実感を持てるんだ」ということが、働く方のやりがいにつながります。

東日本大震災後、津波被害を受けた家の掃除は、主に緊急雇用でやられていました。泥を掻いては出すという非常に地味な仕事ではあるものの、受益者の顔が見える、地域のためになるということがわかりやすく、やりがいに繋がっていたと思います。

コロナで、学校現場で消毒に手が取られて大変という話も聞きます。新しい仕事のニーズはすごくあるはずなんです。重要なのは「そういう仕事を担ってくれる人々が感謝されるか」という点です。「人がやりたくない仕事を失業者にやらせてあげている」というふうに見られると、うまくいかない。このさじかげんは非常に難しいと思います。

渡邉:たとえば学校の消毒をやるとした場合、誰が仕事を切り分けていくのでしょうか。学校や教育委員会など縦割りのものの調整を含めて、すべてを就労支援団体が担っていくんですか?

工藤:就労支援ではもともと地域との関わりがすごく重要です。地域のまわりの人や商店街の重鎮にお願いしたりもしますし、地域との関係性をつみあげてきた団体であればあるほど、「これをやってくれたら地域のためになるな」という仕事を見つけられるのではと思いますね。

あと就労支援とは、「その人にあった働き方を一緒につくる」ものです。「消毒の仕事しかないよ」とか、仕事と人を無理にマッチングさせていくのでなく、より幅広く働くことを考えます。就職支援だと雇われる、採用されるために支援プロセスを形成しますし、それを望む若者の方が多いです。ただ、誰もがそうではないとき、就労支援はもう少し人にあわせて仕事をつくっていけるかなと思います。

渡邉

:キャッシュフォーワークが”仮設仕事”として一定期間のものだとすると、その先の仕事へのつなぎも就労支援組織がやっていくんですか?

工藤:就労支援団体がやることかなと思います。就職したい人にはハローワークで求人票を一緒に見たりもやりますし、「今すぐ就職じゃないよね、でも子どもは好きだよね」という場合は、週3のバイトと週1のベビーシッターを組み合わせたりもします。身分としては安定しないかもだけど、まずはあなたの安定を考えましょうと。その人の安定無くして、継続的な就労はあり得ないので。

災害があったら、仕事を持ってかけつけられるようになりたい

ーキャッシュフォーワークを行う就労支援団体が、企業や行政とちゃんと組んでいけるのも重要だなと思っています。

永松:東日本大震災後、キャッシュフォーワークについて国会でもとりあげていただき一部政策にもなりました。震災で1番仕事が増えたのは行政なのですが、緊急雇用的に行政で人を雇ったりもあったようです。災害救助法にキャッシュフォーワークをいれられないかとも提案していますが、そこはまだ実装されていません。危機に強いレジリエントな社会、どんな危機があってもみんなが生き延びられる社会をつくるためには、雇用がなくならない設計が必要です。

渡邉:企業としてお話しさせていただくと、地方の中小企業は本当に人材を必要としているけど、採用できていない。コロナ禍において、ニューノーマルに合わせて業務定義をしなおして、「ウチはこういう人が欲しい」って言える企業って、まだ少ないと思うんです。大変だとは思うのですが、(キャッシュフォーワークを考えるにあたって)雇う側の教育のようなところまでも就労支援がやってくださるといいのかもしれません。

工藤:今後は、電車じゃなくて歩きや自転車で通勤できる近所の人を率先して雇いたいという判断もあると思うんです。あとは完全にオンラインのみで働けるとか、動画が作れるとか。そういった若い人を企業が探している時に、「働く準備ができている人がここにいるよ」というのをつくっていけるといいですね。ハローワークのように書面でいきなりマッチングするのではなく、その人その人の適性を見ながらやっていく、その先駆けのようなものになればいいなと思います。

ーー改めて、今回の「キャッシュフォーワーク2020」のプラットフォームで何が起こる、何が変わるといいのか、それぞれコメントいただけますか。

工藤:東日本大震災があったときに「自分たちは役にたたない」って思ったのが、僕はすごく大きいです。「町が破壊されているのに、就労支援なんてて誰がやるの?」って。食料がない、住まいがないという時、手を出せない自分たちがいました。

今回プラットフォームができることによって、災害があったら、仕事を持って真っ先にかけつけられるようになったらいいなと思います。たとえば熊本も、避難所内のボランティアにお金を払って仕事にできたらいい。「大変なことが起きたら人道支援とキャッシュフォーワークにまずお金を入れる」というのが実現できると、今後の災害支援のあり方が変わるんじゃないかなというのが僕の想いです。

渡邉:人道支援のスペシャリストしかできないことと、経験や資格がない住民の方でもできることが、自然災害においては既に見えてきている気がします。私自身はまだ明確に見えていないのですが、コロナ禍の状況においても仕事はいっぱいあるはずです。「資格がないとダメ」とか「縦割りでうまく仕事を切り出せない」とか、そうした慣習を崩していければ、このプラットフォームが活きていくだろうなと思いました。

永松:ずっと災害について研究していますが、自然災害はどこかが局所的に壊滅的にやられていて、マスコミの注目もお金も集まりやすいわけです。コロナにはそれがない。被害も困っている人もいろんなところに散らばっていて、なかなか「コロナの復興のために働いている」とは思いにくいかもしれません。

ただ見方を変えると、災害対策の仕事は復興したら無くなりますが、コロナに関連した仕事はニューノーマルなんです。消毒だって、効率的に確実にやってくれる技術とか方法があれば、ビジネスが永続的に成り立つかもしれない。今ここで新しい仕事をつくれば、第一人者になって今後ずっと食っていける可能性もあるなと思うんですよ。そういう可能性を僕はポジティブに考えています。

ーーありがとうございました。最後に、今回の「キャッシュフォーワーク2020」への応募を考えている方へ、メッセージがあればお願いします。

永松:コロナ禍の中で働き方としてオンラインが注目されていますが、就労支援はオンラインにこだわりすぎない方がいいと思っています。逆にオフラインで何かを体験する価値がこれまでよりも高まる社会です。なので柔軟に考えてもらえるといいのかなと思います。いろんなキャッシュフォーワークの事例が集まるのを楽しみにしています。

工藤:助成プログラムには経営負荷が高いものも多いですが、「キャッシュフォーワーク2020」では、経営負荷が限りなくかからないような設計にしています。採択のために事業の中身を考えるのではなく、自分たちのやりたい就労支援を最大化するような企画を出してくれるといいなと思います。雇用と福祉の間で、休眠預金だけでなくもっと大きな政策につながるような動きを、みなさんと一緒にやっていければと考えています。

書き手・田村真菜(「キャッシュフォーワーク2020」広報)

<コロナ禍の中で、就労支援には何ができるのか?前編>はこちら

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