機会としての失業

· コロナ対応

社会起業家支援に取り組み始めて、いつのまにか20年近く経ってしまった。最初はインターネットを使って新しい社会を創りたいと思っていただけだった。いつのまにか、NPOやソーシャルベンチャーの世界が面白くなってしまい、自分の資産もないのに財団なんて立ち上げてしまった。夢に描いたことが本当に実現するかなんて最後までわからないものだ。

 

それまでの間に色んなことを経験した。会社をつぶした。法人を分けた。キャッシュアウトしかけた。病気で働くことすら叶わなくなった。ただ、良く考えると、新しい未来に乗り換えるチャンスを少し早くもらえたのかもしれないと思うようになった。

 

最初に起業した時、直後にリーマンショックが起こった。ターゲットとしていた市場の規模が100分の1くらいに激変し、さらには母の死まで重なり、環境に抗うことができないときもあるのだと思い知った。もし、環境に抗うことができるのは、それは、無謀さや闘争心ではなくて、ある種の冬眠のようなスタイルやしたたかさを身に着けておくことなのかもしれない。

 

そういえば、紛争国のリーダーたちのリスクテイクのあり方には共通項があると聞いたことがある。常に戦争や天災があってもおかしくないように、いつでも逃げられるだけの体力や経路を確保してくのだとか。

 

話がそれたけれど、このコロナ禍の中で役割を失うというのは、ある種、機会であるかもしれないとも思う。東日本大震災の復興でも約3年間を東北で過ごし、色んな方と出会うことができた。自分の築いた商売をゼロから再スタートしようという商売人のおっちゃん。なぜか被災地に惹かれ、ボランティアとして来たつもりが、被災地での起業という結果になったお姉さん。地元に戻るきっかけを探していた若者がUターンして新たな取り組みを始めた。雇用がなくなったからこそ、新しいスキルを得るところから歩みを始めたおっちゃんたち。

 

状況を本当に受け入れることのできた時に人はいい顔をする。自分の趣味でつくっていた繭玉がECサイトで売れるのだと気づいたおばちゃんたちの顔も良く覚えてる。災害を通じて、失うものはとても多い。僕ですらあの津波の後の真っ白な風景が目に焼き付いてる。

 

でも、数か月経つと、木々が生い茂りを始め、緑が芽吹くようになり、それと同じような時間の変化の中で、新しい役割や仕事、そして、産業すら誕生していった。僕らのやろうとしている「キャッシュ・フォー・ワーク」はそんな再生や変容の流れを後押ししようという仕掛けの一つだ。

 

被災者にこそ役割を持たせ、仕事をさせよという不思議な提案だが、世界的に定評のある手法で各地で使われている。なにせ、役割を失った被災者の生活を守るだけの基盤をつくりながら、被災者の力を原動力にして復興を目指そうぜというアプローチだから。

 

キャッシュフォーワークを日本に紹介した永松先生によれば、キャッシュフォーワークは「現場のコーディネーターの力が9割の仕事だ」という。あれ、この言葉って聞いたことはないだろうか?そう、NPOの現場で良くいわれるやつだ。だったら、このキャッシュフォーワークというやつをNPOが上手く使うことができたらこのコロナウイルスの感染拡大という困難すら乗り越えることができるんじゃないだろうか?

 

既にコロナウイルスの感染拡大後に数十万に失業者が増えている。失業予備軍とも言われる休業者を入れるとさらに一桁増えて数百万に達してしまった。まだ、コロナウイルスの感染拡大はどこまでいくかわからない。このまま行けば、失業者が100万人を超え、バブル崩壊の時に起きたような就職氷河期が再来する可能性すらある。

 

それでも、僕自身はこのキャッシュフォーワークってやつを上手く使えれば、けっこういけるんじゃないか?と思ったりする。キャッシュフォーワークは職や収入が減少した人に雇用の機会を提供するアプローチだ。ちょっと考えて欲しいだけれど、この機会を受けいれるには、職を失ったり、収入を失ったという自分を受け入れて、そこから、再スタートのステップを踏み始める必要がある。そういう状況を受け入れた人達の力を僕は東北で見せてもらった。

 

日本人は平時はウダウダ言うのが好きだが、受け入れた時は本当に力強い。そこにステップバイステップの支援がついてきて、その先に新たな雇用の機会まであるとすれば、この災害はどういう転機に変わるだろうか?

キャッシュフォーワーク2020という名前が付けられたのは、支援を今年だけで終わらせず、日本の

緊急支援のあり方の変えていくためだ。そんな無謀な挑戦に力を貸して頂ける仲間と出会い、日本の未来を変えていく道筋を創っていければと心から願っています。ぜひ、お気軽にお声がけ頂ければ。

 

書き手・加藤徹生(リープ共創基金代表)

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